飲泉の効果・効能と関係
温泉は入浴するだけでなく飲むことによって健康に良い効果があるとされていますが、ここでは各病気における飲泉の効果について説明しています。また、それぞれの病気に効果があるとされている泉質についても紹介します。
糖尿病
糖尿病における飲泉の効果に関してですが、炭酸水素塩泉の温泉水を飲むと、血糖状態が改善するという発表がされています。1日0.5リットルを4週間飲んだ後血液検査したところ、飲泉後の一定期間、血糖値を反映する血中グリコアルブミン値が下がったようです。西洋医学においても、血糖値が一定の数値まで下がらないと言われている糖尿病患者が、飲泉と運動をすることによって劇的に正常な数値まで下げたという例もあります。
糖尿病治療に効果があるとされている泉質は、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、硫黄泉、放射能泉で、特に硫黄泉がおすすめとされています。硫黄泉は、代謝亢進から耐糖異常(糖尿病)、高コレステロール血症にその効用が認められています。
慢性的な便秘
胃の動き(蠕動運動)が悪くなると、食べ物がなかなか腸に届かないため、腸自体の動きも悪くなっていきます。その結果、便の中の水分が腸壁に吸収されてしまい、便が硬くなることが便秘の原因です。
温泉医学の研究によると、飲泉は体内の老廃物や毒素を排出させる効果があると言われています。温泉に含まれるミネラル等の温泉成分が、内臓の粘膜からそのまま体内に吸収されることにより、高い効果を得られるのです。温泉の中でも、二酸化炭素泉(炭酸泉)を飲むと、二酸化炭素が胃の毛細血管に入り込むので、それによって血管が広がり血流も増加します。胃の消化活動が活発になるのと同時に腸の働きも活発になり、便秘解消に繋がります。二酸化炭素泉(炭酸泉)の他にも、塩化物泉、硫酸塩泉、酸性泉、硫黄泉、放射能泉といった多くの温泉が便秘解消に良い効果があるとされています。
肥満
メタボローム解析の結果により、飲泉すると代謝がアップすると言われています。グルコースを消費してエネルギーを生み出す働きが強くなることで解糖系が亢進すること、また血中のアミノ酸濃度が減少してタンパク質分解が抑制されることがその理由とされています。また、腸内フローラ解析によって、飲泉後には腸内細菌が増加することが明らかになっており、その肥満防効果が証明されています。解糖系の亢進、タンパク質分解の抑制および肥満防止効果がある腸内細菌の増加といった飲泉による効果を介して血糖状態を改善させることができます。
数ある泉質の中でも、肥満解消には特に硫酸塩泉と硫黄泉が良いとされています。ダイエットに失敗して困っている人は一度飲泉による肥満解消を検討してみてはいかがでしょう。
慢性消化器病
過多の胃酸が胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎を引き起こすと言われていますが、空腹時にアルカリ性の「重曹泉」を飲むとそれを防ぐことができます。重曹泉の飲泉によって、胃酸が中和され、胃酸過多による胃痛や胃の不快感を緩和させることができます。
その一方で、胃酸が少なすぎても胃腸の働きが落ちてしまい、食欲不振につながってしまうので、その場合は「塩化物泉」、「炭酸泉」、「硫酸塩泉」の飲泉がおすすめです。特に炭酸泉は、胃の蠕動運動亢進作用や胃腸機能低下の効果があります。硫酸塩泉は、含有しているマグネシウムの効果によって、胆嚢を収縮させ、胆汁が消化管に分泌されやすくなり、消化管による食物の蠕動運動を活発にするため、便秘にも効果があるとされています。
痛風
血中の尿酸の量が多くなると、血液中に溶けきれなくなり足の親指の関節などの部位に尿酸の結晶が析出します。結晶化した尿酸によって炎症が起こり、激しい痛みが現れる病気が痛風です。
痛風に良いとされる炭酸水素塩泉は炭酸水素イオン(HCO3-)を含んでいます。炭酸水素イオンというのは重曹(NaHCO3)の成分でもあり、弱アルカリ性を示します。炭酸水素泉は飲泉することで、尿酸値を下げたり、また血液や尿をアルカリ性に近づけたりします。痛風の患者は尿酸が多く、血液や尿酸が酸性になっていますが、この酸性の改善につながります。尿酸は特に酸性の血液中や尿中で結晶化しやすいので、血液や尿のアルカリ性化が尿酸の結晶化を防止します。また、ラジウム温泉と呼ばれる放射線泉も「痛風の湯」という別名があるほど、痛風の症状改善に効果があると言われています。
胆石
胆石病の症状改善には、温泉療法として飲泉がよく行われています。温泉水で胆石を溶かすのではなく、胆石を十二指腸のほうに流したり、肝臓の解毒作用を高めたり、胆汁分泌を促すのが目的です。
飲用して胆石に効果があるとされるのは硫酸塩泉です。その特徴は血中に多くの酸素を送り込む作用があるため、保湿効果が大きく、創傷治癒促進効果もあることです。飲泉することで、胆汁の分泌が促進され、肝臓、膵臓の働きも活発になるので胆石に非常に効果的です。また、入浴によって慢性胆嚢炎、胆石症に効果があるとされているのは放射能泉だけです。そして、放射能泉は入浴だけではなく、吸入によっても効能を得ることができ、その効果は入浴による効果よりも高いと言われています。