泉質によって異なる飲泉の効果と注意点
飲泉は体に良い効果をもたらすことが分かっていますが、飲まない方が良い温泉もあります。草津温泉や蔵王温泉など、酸性の温泉は胃に穴が開いたり、歯が溶けてしまったりする恐れがあります。飲泉が許可されているものもありますが、摂取量の説明を読んだうえで適量を飲むようにしましょう。
飲泉することで期待できる効果は泉質によって異なり、禁忌症もあるので持病がある人は特に注意して飲むようにしてください。薬品とは違い飲めば必ず症状の改善につながるわけではないということを理解しておくことです。また温泉はミネラル成分が豊富なので飲泉すると胃腸の働きを活発にしますが、飲みすぎてしまうと胃腸に負担がかかってお腹を壊す可能性もあります。特に鉄泉、放射能泉、ヒ素、沃素、臭素を含有する温泉は飲用の許可を必ず確認してください。
塩化物泉
海水の成分に似た食塩を含む、無色透明の湯です。入浴すると皮膚に塩分が付着し、汗の蒸発を防ぐため、長時間ぽかぽかの状態が続きます。湯冷めしにくい特性があるため、「熱の湯」とも言われ、高齢者にも適した泉質です。飲用すると胃腸の消化が促進され、胃腸病や慢性便秘にも良い効果が期待できます。
ただし、高血圧、心臓病、腎臓病などの食塩制限がある持病のある方、浮腫があるときは控えた方が良いでしょう。また、塩分の濃度が高い強食塩泉の飲用は害になるため、飲用を控えるか薄めて飲むようにしましょう。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
炭酸水素塩泉
炭酸水素塩泉に区分されるものには大きく二つの種類があります。一つはカルシウム・マグネシウム・炭酸水素塩泉で、古い温泉成分表では重炭酸土類泉と表記されていることがあります。利尿作用があり、痛風や尿路結石、膀胱炎に効果があるほか、血糖値を安定させる作用があるため糖尿病への効果も期待できます。もう一つはナトリウム・炭酸水素塩泉で重曹泉とも呼ばれます。皮膚の表面をなめらかにする作用があり、皮膚病に良いと言われています。また胃酸を中和する作用もあるため、飲むと胃がすっきりします。
飲用の適応症
- 胃十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 耐糖能異常(糖尿病)
- 高尿酸血症(痛風)
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
硫酸塩泉
温泉に含まれている成分の違いにより、カルシウム硫酸塩泉、ナトリウム硫酸塩泉、マグネシウム硫酸塩泉の3つに分かれており、それぞれ期待される効果も異なります。カルシウム硫酸塩泉は石膏泉とも呼ばれ、カルシウムの鎮静効果により切り傷、火傷、ニキビ、皮膚のかゆみなどに効くと言われています。また飲用すると蕁麻疹にも効果があるとされます。
ナトリウム硫酸塩泉は、高血圧、動脈硬化、外傷に作用し、飲泉すると腸の運動が活発化するため、糖尿病や通風に効くと言われています。
マグネシウム硫酸塩泉は独特の苦味があるため正苦味泉とも言われています、他の硫酸塩泉と同様に傷みを和らげる鎮静作用がありますが、血圧の降下作用に秀でており、動脈硬化の予防にも役立つとされます。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
二酸化炭素泉
二酸化炭素を含む温泉です。温度が高くなると炭酸が気化するため、一般的に温度が低いのが特徴です。別名で炭酸泉と言われるように入浴すると炭酸ガスが皮膚に付着し、吸収されると毛細血管を拡げて血液の循環が良くなるとされます。飲用では胃腸を刺激し、血液循環が良くなることから利尿作用、食欲増進などの効果が期待できます。ただし、下痢のときの飲泉は控えましょう。また、時間がたつと成分が失われやすいので、浴槽の下から注がれている温泉が理想です。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
含鉄泉
その名の通り、鉄分を含む温泉です。湧出する際には無色透明でも鉄分が空気に触れると酸化するため茶褐色に変化します。造血作用が促進されるので貧血に優れた効果を発揮する言われ、更年期障害、月経障害などにも効くとされます。飲泉は基本的に禁止です。ただし、高い鉄分を体内に取り込めるため、貧血の人であれば効果が期待できますが、多飲することはおすすめできません。安全面を考えると、やはり入浴から効果を得る方が良いでしょう。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
含よう素泉
うがい薬にも使われている、ヨウ素を含む温泉です。温泉水1kg中に10mg以上ヨウ化物イオンが含まれる場合に含よう素泉とされます。色は茶褐色で時間が経つと黄色く変化。臭いもヨウ素独特の薬臭があり、うがい薬のような泉質です。ヨウ素は活性度の高い元素で、強い酸化力を持っており、体を温める作用のほか、清浄作用、殺菌作用があり、精神的なリフレッシュも得られるのが特徴です。飲泉すると高コレステロール血症に効くと言われています。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
硫黄泉
ゆで卵の腐ったような臭いがする、最も温泉らしい泉質です。含有成分の種類によって二種類あり、遊離炭酸ガスや硫化水素を含有しない硫黄泉と、遊離炭酸ガスや炭酸ガスを含む硫化水素泉が存在します。
硫黄泉は、「万病の湯」と称えられ、たくさんの効能を持っているのが特徴です。湯気を口から吸入すると器官が拡張され、痰が出やすくなる効果があるほか、解毒作用があり、金属中毒や薬物中毒に利用されることもあります。さらに、糖尿病、高血圧、動脈硬化の効能もあり、生活習慣病の湯と言われることもあります。
飲用の適応症
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」より引用
https://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/zentaiban.pdf
“糖尿病“を適応症とするのは
”炭酸水素塩泉“と”硫黄泉“
上記で紹介した泉質のうち、糖尿病への効能が期待できるのは、炭酸水素塩泉と硫黄泉です。ただしあくまで飲用した場合に改善効果があると考えられるものです。
温泉水と同じく、地中から湧きだしているミネラルたっぷりの天然水もおすすめです。