鉄とは?
鉄分は脾臓や肝臓などの臓器に貯蔵されている微量ミネラルで、体に鉄分が必要になったときには貯蔵分から補給されます。
鉄分が不足すると貧血の原因になる、というのはすでにご存じでしょう。ただ、鉄分を摂り過ぎると鉄中毒になり、便秘や胃腸障害を引き起こすだけではなく死に至る危険性もあります。
つまり、鉄分は不足しても過剰摂取しても身体に悪影響を及ぼす栄養素であり、バランスよく摂ることが大切です。
統計で見ると、日本はアメリカやヨーロッパと比べると男女共に鉄摂取分は少なめ。また女性は鉄分が不足しがちで、男性よりも貧血になりやすいそう。女性よりも貯蔵が多い鉄男性は貧血にはなりにくい一方で、糖尿病リスクが高いというデータもあります。
また、「遺伝性ヘモクロマトーシス」という遺伝子を持っている方は、糖尿病予備軍と言われる「2型糖尿病」のリスクが高いことが分かっています。
鉄と糖代謝の関係性
鉄は普段、脾臓や肝臓、骨髄に蓄えられており、身体が鉄分を必要としたときに臓器から補給される仕組みで、その多くは呼吸によってエネルギーをつくり出す細胞内小器官「ミトコンドリア」で使用されます。
ミトコンドリアでは糖質やタンパク質、脂質がエネルギーへと変えられています。そのとき、酵素の活性中心となるのが鉄です。つまり、鉄がなくてはミトコンドリアでは上手くエネルギーがつくられません。もし鉄が不足すると、エネルギーが思うように作れず、貧血などの症状を引き起こします。
糖尿治療のひとつにインスリン治療がありますが、インスリンの急性リスク「低血糖」にも実は鉄欠乏が関わっており、鉄不足を解消することで低血糖の改善も期待できます。
しかし鉄分を多く摂ればいいというわけではないので要注意。むやみやたらにサプリメントなどで補給すれば過剰摂取となり、胃腸障害を起こす可能性があります。さらに遺伝性疾患「遺伝性ヘモクロマトーシス」の方は2型糖尿病になるリスクが高まるため、注意が必要です。
遺伝性ヘモクロマトーシスとは?
遺伝性ヘモクロマトーシスとは、体内に過剰に鉄分を貯蓄してしまう常染色体性劣性遺伝の病気のこと。鉄分が過剰に貯蓄されてしまうと、さまざまな臓器障害を引き起こす可能性があるほか、がんの発病リスクも高まります。
発病のきっかけは、体に鉄を取り込むのに必要なタンパク質の遺伝子異常です。名前のとおり遺伝性の病気なので、自然に発病する可能性はほとんどありません。
鉄が体に貯蓄しはじめて発症するまでに10~20年ほどかかります。自覚症状として挙げられるのは疲れやすい、息切れ、のどの渇き、動悸など。自分にヘモクロマトーシス遺伝子があるか否かを知るには遺伝子検査で確認できます。まれな病気ですが、気になる方は一度検査してみるとよいでしょう。
鉄とインスリン分泌の関係性
膵臓に鉄が過剰に貯蓄されると酸化ストレスを誘発し、血糖を分泌する膵臓β細胞を傷つけてしまい、体内で必要なインスリンの分泌が損なわれます。
とある研究では、遺伝性ヘモクロマトーシス患者は2型糖尿病の発症リスクが高いということが分かっています。
また、遺伝性ではないヘモクロマトーシスの症例では、鉄の過剰で肝臓を傷める事により、ブドウ糖代謝に支障をきたしてインスリンが十分に作用できなくなり、糖尿病のリスクが高まると考えられています。
鉄の過剰貯蓄に対しては、インスリン分泌指数を向上させるために静脈を切開して鉄除去を行うなどの処置が必要です。
しかし、今現在では鉄と糖尿病の関係は明らかになっておりません。関係を明らかにするために、臓器に貯蓄される鉄の減量で2型糖尿病の予防効果があるのか、無作為化対照試験が求められています。
男性はとくに鉄摂取による糖尿病発症リスクが高い
男性は牛肉や豚肉を好んで食べる方が多く、女性よりも鉄の摂取量が多いとされています。そのため女性と比べて貧血になりにくいのです。しかしその一方で糖尿病の発症リスクは男性のほうが高いというデータも。
体内の貯蔵鉄の状態を示す値フェリチン値が高い人は、インスリン効果が低いことが分かっており、このことから貯蔵鉄の多い男性のほうが女性よりも糖尿病の発症リスクが高いことが推測できるのです。
鉄の摂取目安量
1日に人間が摂取すべき鉄の量を年齢別に表にまとめてみました。
妊婦さんは妊娠初期で+2.5・中期~末期で+15.0、授乳婦の場合は+2.5となります。
また2010年の統計では、日本人女性や10代以下の男子の鉄摂取量が不足しているという結果が出ています。
| 年齢 | 男性 | 女性 ※月経なし |
女性 ※月経あり |
|---|---|---|---|
| 0~5か月 | 0.5 | 0.5 | - |
| 1~2 | 4.5~25 | 4.5~20 | - |
| 3~5 | 5.5~25 | 5.0~25 | - |
| 6~7 | 6.5~30 | 6.5~30 | - |
| 8~9 | 8.0~35 | 8.5~35 | - |
| 10~11 | 10.0~35 | 10.0~35 | 14.0~35 |
| 12~14 | 11.5~50 | 10.0~50 | 14.0~50 |
| 15~17 | 9.5~50 | 7.0~40 | 14.0~40 |
| 18~29 | 7.0~50 | 6.0~40 | 10.5~40 |
| 30~49 | 7.5~55 | 6.0~40 | 10.5~40 |
| 50~69 | 7.5~50 | 6.5~40 | 10.5~40 |
| 70~ | 7.0~50 | 6.0~40 | - |
鉄不足になると起こる症状
鉄は、肺から全身に酸素を運搬するヘモグロビンの成分の1つ。その鉄が不足すると「鉄欠乏性貧血」を起こします。症状としては疲労が溜まりやすくなったり、免疫力の低下などが考えられます。
また、男性よりも女性のほうが貧血になりやすい理由として、男性と比べてあまり肉を食べないことや月経の影響などが挙げられます。女性は意識して鉄分を摂取するようにしましょう。
鉄過剰摂取によるリスク
鉄を過剰摂取すると、鉄中毒を起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。複数のサプリメントを飲まれている方は鉄の過剰摂取になっていないか、一度チェックしてみてください。鉄の過剰摂取があった場合は6時間以内に症状があらわれます。自己判断せず、早めに医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
※1:J-STAGE|日本内科学会雑誌, 2010年, 99巻6号, P.85-90「4.鉄過剰と膵障害・糖尿病」
※2:微量栄養素情報センター「鉄」
※3:ヘルスUP|NIKKEI STYLE「鉄分、うつ状態と関係も 不足も過剰も体に悪影響」
※3:公益社団法人 千葉県栄養士会「年代別の食事」


