紅茶と糖尿病の関係
2012年、ドイツのデュッセルドルフ大学の研究チームが、1日に4杯以上の紅茶を飲むことで糖尿病リスクを20%低下させることを発表して話題になりました。[※1]
また、日本国内でも早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構研究院の高見澤菜穂子博士の研究チームなどが、紅茶によって血糖値の上昇が抑制され、糖尿病やメタボリックシンドロームといった生活習慣病の予防に効果があるという研究報告を発表しています。[※2]
紅茶ポリフェノールは血糖値上昇抑制に効果がある?
高見澤博士の研究によると、紅茶による糖尿病などの予防効果は、紅茶に含まれているポリフェノールの作用が理由であると示唆されています。
博士の研究では、炭水化物を糖分へと分解する消化酵素と紅茶を混ぜて、糖分の分解効果を検証した結果、水と消化酵素を混ぜた場合よりも、紅茶を一緒に混ぜた方が分解される糖分の量も少なくなることが認められました。また、パンと一緒に紅茶を摂取することで、食後の血糖値が抑えられることも確認されました。
これらの結果、食事の際に紅茶を一緒に飲むことで、血糖値の上昇が抑制され、糖尿病リスクを減少させると期待されています。[※2]
紅茶は茶葉によってポリフェノール量が変わる?
紅茶には100ml中におよそ40~200mgのポリフェノールが含まれているとされますが、さらに茶葉の品種や栽培方法によってもポリフェノールの量は変化します。
高見澤博士の研究では、紅茶の種類による抗酸化作用を比較したところ、スリランカのディンブラ地方で採れるディンブラと、世界三大紅茶の1つとも呼ばれるウバにおいて、特に効果が認められたそうです。
また、紅茶ポリフェノールの量は、栽培エリアの日中の気温差が大きいほど増加することも分かっています。[※3]
研究で発表された紅茶ポリフェノールの効果
血糖値上昇抑制効果の他にも、紅茶ポリフェノールには様々な健康効果が期待されています。
紅茶には、脂肪を分解する消化酵素リパーゼの働きを阻害し、脂肪の吸収を抑制する効果があると報告されました。また、イタリアの研究チームが行った臨床試験では、高血圧症の患者に1日2杯の紅茶を摂取させたところ、血圧が低下し正常値へ近付いたということも確認されています。
さらに、紅茶大国のイギリスでは、紅茶を普段から1日に2杯以上飲む人は、紅茶を飲まない人よりも卵巣がんリスクが約30%も低かったという研究データが発表されました。
この他、国内の研究報告として、静岡県環境衛生科学研究所が紅茶の殺菌作用を発表しており、紅茶に含まれるテアフラビン類を使った動物実験によって、ノロウィルスの感染力が約1/1000にまで減少したそうです。[※3]
紅茶の飲み方には注意点もあり
紅茶に血糖値上昇抑制効果があったとしても、甘い紅茶が好きだからと砂糖を大量に入れれば意味がありません。また、紅茶にはシュウ酸が多く含まれており、シュウ酸は尿路結石を形成する要因としても挙げられています。そのため、過去に尿路結石症の既往歴がある人の場合、紅茶の飲み過ぎや飲み方にも注意しなければなりません。
なお、シュウ酸はカルシウムと一緒に摂取すれば吸収を抑えられるとされており、尿路結石症の再発予防としては、カルシウムを含む牛乳を使ったミルクティーなどが推奨されています。[※4]
【コラム】紅茶は1日4杯以上?ただし注意点もあり!
糖尿病の予防を目的として紅茶を飲む場合、食事と一緒に紅茶を飲むこと、さらに1日4杯以上の紅茶を飲むことで、血糖値の上昇を抑制する効果が期待できるとされています。
しかし、飲み方や体質によっては、日常的な紅茶の摂取が糖尿病や尿路結石症といった病気のリスクを上げる恐れもあり、注意しなければなりません。
また、茶葉によってもポリフェノール量は変わるため、自分にとってベストな品種や飲み方などを考えていきましょう。
※2:日本紅茶協会|紅茶と健康 紅茶Labo.,「Topics02 血糖値」
※3:日経電子版,「NIKKEI STYLE」「1日3杯で万能の健康効果「効く」紅茶の飲み方」
※4:一般社団法人兵庫県医師会公式サイト,「再発することが多い尿管結石」